『スタンチク=ゴンスカの冴えなくも幸福な一日』 アサイラム・チャレンジ特別篇
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グローシム・アサイラムからこんばんわ、スタンチク=ゴンスカです。今日は、私の1日をお届けしろとの天の声がしたので、天の声の代わりにブログを更新しています。
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いつも天の声に働かされているドゥシャ君は、ここ最近ロケット作りで忙しそうです。皆でアサイラムの共同生活を始めた頃の火事の時も、ドゥシャ君は真っ先に動いて消火していたし、よくお腹を空かせたアサイラムの皆に食事を作って呼んでくれるので、彼は勇気と優しさがある、とても素晴らしい人だと思います。(ただ彼のサルサ・チップスは塩辛いですが)
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「アサイラムは、本当は私みたいな人が入る場所なのに、どうしてドゥシャ君みたいな良い人が入院させられてるんだろうか……」
ゴミがあっても気にせずお風呂に入ります。ちなみにお漏らししたから入っているわけではありません。
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「ああ……、もう限界……zZZ」
もとから私は不器用な性格なのですが、最近では病状の悪化と共に、ビチャビチャになった床でも平気で寝てしまう神経になってきてしまいました。改善できればしたいのですが、生来の性格は自分ではどうしようもできません……。
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私には日課があります。病棟2階のホールにある部屋に行きます。
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倉庫です。
ここでいつも失語症を直すために、ジョークの練習をしています。昔の私は、そこそこ売れたコメディアンとして冠番組を10本、レギュラー6本、それと朝のニュース番組の司会もやらせて頂いてました。私が思うように言葉を出せなくなったのは突然のことで、その時のことはよく覚えていません。ただ生放送で声も出せずに倒れてしまったことだけ時々思い出します。それ以来、以前のように人を笑わせられたことはありません。……なんだか喉が痛くなってきたので、今日の練習はやめておきます。
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寝ようと思いましたが、また例の生理現象がやってきました。早めに行っておけばよかったのにと、また天の声が聞こえてきましたが、不器用なのでどうすることもできません。仕方ないので不器用なりに急いでみます……。
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先客がいました。
なんとも耐えがたい気分です。いつも生理現象に悩まされる時に、手洗いに行くと、こうなります。
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私はスタンチク= ゴンスカ。元コメディアンです。
願望は、もちろんジョークスターですが、人を笑わせられたことは、あれ以来一度もありません。
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せっかくのトイレを目の前に、ショックや疲労で倒れていると……、
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ドゥーくんに先を越されてしまいました。
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……自分の不器用さを恨めしく思ったことはありません。
あるのはただただ冴えない惨めさです。
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しかし悪いことだけではありません。やっと空いたベッド(しかもダブルベッド!)で今夜はぐっすり寝むることができそうです……。
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漏らしました。
それはもう、今までで最もどん底にいるかのような気分です。
思えば食べ物らしい物も食べれていませんし、ここいらで私の人生も終わりなのかもしれません。
「ぉーぃ……」
?……誰かの声がします。
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「サルサチップス作ったぞー!食べたい奴は好きに食べろー!」
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……ドゥシャ君のサルサチップスは、しょっぱいにもかかわらず、いつも優しい味がします。
そういえば、いつかの夜に隣のベッドから、女性の名前を何度も呼ぶ消え入りそうな声が聞こえてきたことを思い出しました。
ドゥシャ君は、やはり私が思うような人だと思います。
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「明日も倉庫に行ってみようかな……」
私はスタンチク=ゴンスカ。今日も冴えないながらも幸福な日を過ごせています。